「年金はいくらもらえるんだろう」
老後のことを考えると、この問いが頭をよぎる。 でも、実際に自分の年金額を確認したことがある人は少ない。
漠然と「少ないんだろう」と思い込んで、必要以上に不安を抱えていることも多い。
まず、自分の数字を確認することが全ての出発点だ。 この記事では、年金受給額の確認方法と、増やすための具体的な手段を整理する。
「年金はあてにならない」は半分本当、半分嘘
「年金制度は破綻する」という声は、長年繰り返されてきた。
実際には、年金制度は将来にわたって「何らかの形で続く」と考えることが現実的だ。 受給額が減る可能性はあるが、ゼロになることは考えにくい。
「あてにならない」という感覚で老後設計から年金を外すと、必要以上に大きな貯蓄目標を立てることになる。 年金を正確に把握した上で「不足分だけをどう埋めるか」を考えることが、現実的なアプローチだ。
自分の年金受給額を確認する3つの方法
①ねんきん定期便を読む
毎年誕生月に、日本年金機構から「ねんきん定期便」が届く。
50歳以上の場合、現在のままの状態で60歳まで働き続けた場合の「見込み年金額」が記載されている。 封筒を開けずに放置している人は、今すぐ確認してほしい。
ただし、この金額は「現在の加入状況が続いた場合」の試算であり、転職・退職・収入変化によって変わる。
②ねんきんネットで試算する
より詳細な試算は「ねんきんネット」(https://www.nenkin.go.jp)で行うことができる。
基礎年金番号またはマイナンバーで登録でき、収入変化・退職時期・繰り下げ受給などの条件を変えながら、様々なシナリオの受給額をシミュレーションできる。
「60歳まで働いた場合」「65歳まで繰り下げた場合」「70歳まで繰り下げた場合」—— これらを比較することで、自分にとって最適な受給開始時期を検討できる。
③社会保険労務士に相談する
より正確な試算や、受給額を最大化するための戦略を立てたい場合は、社会保険労務士への相談が有効だ。
特に、転職・フリーランス経験がある場合や、国民年金と厚生年金が混在している場合は、計算が複雑になる。 年金事務所でも無料相談ができる。
50代の平均的な年金受給額の目安
厚生労働省のデータをもとにした目安として、会社員として概ね40年間加入した場合の受給額の参考値を示す。
夫婦2人(夫:会社員40年、妻:専業主婦または短時間就労)の場合: 月22〜25万円程度が目安になるケースが多い。
単身(会社員40年)の場合: 月15〜18万円程度が目安になるケースが多い。
ただし、これはあくまで目安であり、実際の受給額はキャリアや収入水準によって大きく異なる。 自分の数字は、必ずねんきん定期便またはねんきんネットで確認してほしい。
年金受給額を増やす3つの方法
①繰り下げ受給(最大42%増)
通常65歳から受け取る年金を、66〜75歳まで遅らせることを「繰り下げ受給」という。
繰り下げると、1ヶ月ごとに0.7%ずつ年金額が増える。
- 66歳まで繰り下げ:8.4%増
- 68歳まで繰り下げ:19.2%増
- 70歳まで繰り下げ:42%増
- 75歳まで繰り下げ:84%増(2022年4月から上限が拡大)
65歳から月15万円受け取る予定の人が70歳まで繰り下げると、月約21万3,000円になる計算だ。
ただし「損益分岐点」がある。 65歳受給と70歳繰り下げ受給の累計額が逆転するのは、約80歳前後だ(試算による)。 健康状態と家族の長寿傾向を考慮した上で判断してほしい。
②60歳以降も厚生年金に加入し続ける
60歳以降も会社員・パート(週20時間以上)として働くと、厚生年金の加入が継続され、その分だけ受給額が増える。
「在職老齢年金」の制度により、65歳未満で一定以上の収入がある場合は年金が一部支給停止になることもあるが、65歳以降は比較的受け取りやすくなる。
60〜65歳の5年間の就労継続で、年金額が月数千円〜数万円増えるケースがある。
③iDeCoで上乗せする
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、国民年金・厚生年金に上乗せする「私的年金」だ。
自分で積み立て・運用した資産を、60歳以降に年金または一時金として受け取れる。 掛け金が全額所得控除になるため、現役時代の節税と老後の上乗せを同時に実現できる。
50代から始めても、10年間の積立で数百万円の上乗せが可能だ。
年金だけで生活できるかを計算する
自分の年金受給見込み額を確認したら、次の計算をしてほしい。
月の生活費(見込み)− 月の年金受給額 = 月の不足額
この不足額がわかれば「老後に必要な貯蓄額=月の不足額 × 12ヶ月 × 老後の年数」で計算できる。
「2000万円必要」という漠然とした数字ではなく、自分のケースに基づいた具体的な目標金額が見えてくる。
具体的な数字が見えると、不安が「解決すべき課題」に変わる。
まとめ
年金は「あてにならない」と決めつけず、まず自分の受給見込み額を確認することが全ての出発点だ。
ねんきん定期便を開く、ねんきんネットにアクセスする——今日できることはその一つだけでいい。
自分の数字を知ることが、老後設計の最初の、最も大切な一歩だ。
