リストラが決まると、最初に頭をよぎるのは「退職金はいくらか」という問いだ。
それは当然のことだ。これからの生活の土台になる数字だから。
でも、退職金の相場を知らずに受け取ると、損をするケースがある。 また、退職金を手にした後の使い方を誤ると、老後が一気に不安定になる。
この記事では、退職金のリアルな相場と、受け取った後の賢い使い方を整理した。
50代リストラの退職金、現実の相場
勤続年数・企業規模による違い
退職金の額は、勤続年数・企業規模・退職理由(会社都合か自己都合か)によって大きく異なる。
一般的な目安として、大企業・勤続25年・会社都合退職の場合、退職金は1,500万〜2,500万円程度になることが多い。中小企業の場合は500万〜1,000万円程度になるケースが多い。
ただし、これはあくまで目安だ。 自社の退職金規程を確認するか、人事担当者に試算を依頼することが正確な把握につながる。
早期退職優遇制度がある場合
リストラに際して「早期退職優遇制度」が用意されている場合、通常の退職金に上乗せがあることが多い。
上乗せ額は「基本給×○ヶ月分」で計算されることが多く、500万〜1,000万円以上の加算になるケースもある。
この制度を利用するかどうかは、期限内に判断する必要がある。 焦って判断するのではなく、税理士や労働相談窓口に相談した上で決めることをお勧めする。
退職金を受け取る前に確認すること
退職所得控除の計算
退職金には「退職所得控除」という大きな税の優遇がある。
勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数 勤続年数が20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数−20年)
例えば勤続25年の場合、800万円+70万円×5年=1,150万円が控除される。 退職金が1,150万円以下であれば、所得税がほぼかからない計算になる。
この控除を受けるために、退職後に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出することが必要だ。忘れずに手続きしてほしい。
会社都合と自己都合で変わること
退職金の額は、退職理由によっても変わる。
多くの企業では、会社都合退職の方が自己都合退職より退職金が多く設定されている。 リストラは原則として会社都合退職だが、会社側が「自己都合」として処理しようとするケースもある。
離職票と退職合意書の「退職理由」欄を必ず確認し、「会社都合」と明記されているかを確かめること。
退職金の「賢い使い方」と「やってはいけないこと」
まず生活防衛資金として確保する
退職金を受け取ったら、最初にやることは「投資でも返済でもなく、生活防衛資金の確保」だ。
目安は、毎月の生活費×6〜12ヶ月分だ。 これを普通預金・定期預金などの安全な場所に置く。 この資金が確保されていれば、焦って転職や副業を決める必要がなくなる。
精神的な余裕が、次の判断の質を高める。
投資に回す場合の原則
生活防衛資金を確保した上で余裕がある場合、投資を検討してもいい。
原則は3つだ。
①失っても生活に困らない額だけ投資する——退職金の全額を投資に回すことは絶対にしない。
②長期・分散・積立を基本にする——iDeCoやNISAを使ったインデックスファンドへの積立が、50代には最も適した方法の一つだ。
③元本保証をうたう商品は疑う——銀行や証券会社が退職金受取者に勧めてくる「元本保証型」の金融商品は、手数料が高いことが多い。契約前に必ず内容を確認する。
絶対にやってはいけない3つのこと
①退職金で住宅ローンを全額繰り上げ返済する 手元資金がなくなり、転職活動や生活費に困るリスクが高い。繰り上げ返済は、生活防衛資金を確保した後で検討する。
②「副業」「投資」の名目で高額な教材やスクールに支払う 退職直後は「お金を増やさなければ」という焦りから、詐欺的な商品に騙されやすい。数十万円以上の初期費用を求めるものは、必ず立ち止まって考える。
③家族に黙って動かす 退職金は家族の生活にも直結する資金だ。使い道は必ず家族と話し合って決める。
退職金だけでは足りない場合の対策
退職金が少なく「これだけでは老後まで持たない」と感じる場合、焦らないことが大切だ。
選択肢は複数ある。
雇用保険の給付を最大限活用すること、副業で収入の柱を増やすこと、固定費を見直して支出を減らすこと——これらを組み合わせることで、退職金が少なくても生活設計は立て直せる。
「退職金の額イコール老後の豊かさ」ではない。
まとめ
退職金は、次の人生を始めるための「種銭」だ。
焦って使わないこと。 生活防衛資金を先に確保すること。 投資は余剰資金で、少額から始めること。
この3つを守るだけで、退職金の使い方で後悔するリスクを大きく減らせる。
