休職が決まった朝、二つの感情が同時に来た。
「職場に行かなくていい」という、張り詰めていたものが緩む感覚。 そして「こんな自分はダメだ」という、重い罪悪感。
その両方が本物だった。
休職中の過ごし方に「正解」はない。 でも、やって良かったことと、やらなくて良かったことは、はっきりある。 この記事は、その記録だ。
休職が決まった日——罪悪感と安堵が同時に来た
診断書を出して、休職が認められた日。
上司に連絡して、当面の仕事を引き継ぎして、「お世話になりました」と言った。 電話を切ったあと、しばらく動けなかった。
「逃げた」という感覚があった。 「みんなに迷惑をかけた」という感覚もあった。
でも——翌朝、目覚まし時計が鳴らなかった朝のあの感覚を、今でも覚えている。 体が、少しだけ軽かった。
それが回復の、最初の兆しだったと、今は思う。
やってよかったこと5つ
①最初の2週間は何もしなかった
「休職中に何かしなければ」という焦りが、最初からあった。
復職に向けて勉強しよう。スキルアップしよう。資格を取ろう—— そういう考えが頭をよぎった。
でも主治医に言われた言葉がある。 「最初の2週間は、何もしなくていいです。眠れるなら眠ってください」
その言葉に従った。 本当に、ただ眠った。食べた。ぼんやりした。
2週間後、少しだけ「外に出てみよう」という気持ちが生まれた。 それが回復の始まりだった。
②生活リズムだけを守った
何もしない期間が終わった後、一つだけルールを作った。
「毎朝7時に起きて、毎晩11時に寝る」
それだけだ。 何をするかは決めなかった。ただ、起きる時間と寝る時間だけは守った。
睡眠リズムが整うと、体の回復速度が上がった。 「今日も決めた時間に起きられた」という小さな達成感が、自己肯定感を少しずつ戻してくれた。
③感情ノートをつけた
毎晩、その日感じたことをノートに書いた。
「今日は外に出られた」 「午後から急に悲しくなった。なぜかはわからない」 「職場のことを夢で見た。目が覚めたら怖かった」
上手く書く必要はない。 事実と感情を、ただ書き留めるだけだ。
2ヶ月後にノートを読み返すと「最初の頃より、暗い記録が減っている」ことに気づいた。 回復の軌跡が、目に見えた。それが「自分は回復している」という確信になった。
④主治医との面談を正直に使った
最初の頃、主治医への報告は「体調は普通です」ばかりだった。
「心配をかけたくない」「弱く見られたくない」という意識が、正直な報告を妨げていた。
でも、ある日「実は夜中に急に涙が出て止まらない日があります」と正直に話した。 主治医の対応が変わった。薬の調整と、具体的なアドバイスをもらえた。
主治医は、正直に話すほど助けてくれる。 「大丈夫なふり」をする必要は全くない。
⑤小さな「できた」を積み重ねた
回復期に入ってから、毎日一つだけ「できたこと」を記録した。
「今日は近所のコンビニまで歩いた」 「今日は30分、本を読めた」 「今日は久しぶりに料理をした」
大したことではない。 でも、その積み重ねが「自分はまだ動ける」という感覚を取り戻させてくれた。
やらなくてよかったこと4つ
①復職・転職を早く考えすぎた
休職1ヶ月目から、復職のことを考え始めた。
「いつ戻れるか」「戻れなかったら転職か」「転職できるのか」—— 考え始めると止まらなかった。その思考自体が、回復を遅らせた。
主治医から言われた。 「回復の半分まで来たら、次のことを考え始めていい。まだその段階ではないです」
その言葉で、少し楽になった。 考えるにも「タイミング」がある。
②自己啓発書を読みまくった
「この時間を有効に使おう」と思い、自己啓発書を読み始めた。
「マインドをポジティブに」「成功者の習慣」「逆境を力に変える」—— 読めば読むほど、「自分は何もできていない」という焦りが増した。
休職中の自己啓発書は、多くの場合、傷口に塩を塗る。 回復期に読むなら、静かな小説やエッセイの方がずっと良かった。
③職場の人間関係を気にし続けた
「自分が休んでいる間、職場はどうなっているか」を毎日考えていた。
元同僚のSNSを見て、「みんなは頑張っているのに」と感じた。 上司からのメッセージに、必要以上に反応した。
休職中は、職場との距離を意識的に置くことが回復に必要だ。 SNSで職場関係者の投稿を見ることを、意識的にやめた。
④「休んでいる罪悪感」と戦い続けた
最初の1ヶ月、「自分は逃げている」という罪悪感と毎日戦っていた。
その戦いが、回復エネルギーを消費していた。
転機は、主治医の一言だった。 「骨折したら休みますよね。心も同じです。休むことが治療です」
休むことは、治療だ。逃げではない。 その認識が変わった日から、回復が加速した。
復職か、退職か——その判断をいつ、どうやってするか
休職中に必ず訪れる問いが「復職するか、退職するか」だ。
この判断は、休職開始から最低でも2〜3ヶ月後にするべきだ。 メンタルが回復しきっていない状態での判断は、往々にして後悔につながる。
判断の基準として、主治医や産業医に「復職の準備ができているか」を確認することが重要だ。 「戻れそうな気がする」ではなく、「一定の活動ができる状態に戻っているか」を客観的に評価してもらう。
退職を選ぶ場合も、焦らない。 雇用保険の傷病手当金は、休職中も受給できる場合がある。 制度を正確に把握した上で判断してほしい。
まとめ
休職は、敗北ではない。
20年以上、休まず働いてきた体と心への、必要なメンテナンスだ。
やることは一つ。回復することだけ。 そのために休んでいる。それだけを、忘れないでほしい。
